リビングで、日々のケアの中で、入居者様が口にする色々な言葉が聞こえてきます。
「どないしたらええんですか?怖いんです」
「あんたら、とりあえずやさしくしといたらええと思とるやろ!」
これらはスタッフに向けての言葉です。
次は、入居者様同士の会話。
「座っとき。先生ら(なぜかスタッフこのとをこう呼ぶ方が多いのです)を困らしたらあかんやないの」
「知らん。私は私の意思で歩きよるんや!ほっといて!」
これらは、本当の思いから出た言葉であろうと思います。
これに対して、スタッフはどういう態度や声かけをすればよいのでしょうか?
気になる言葉が飛び交っているけれど、いつものことだし、
そこに大きなトラブルはないと黙ってやり過ごし、その後のケアに生かすのか?
なにか声かけをして、さらに本音を引き出すのか?
いずれにしても、マニュアル通りの対応をしているだけでは、本当の思いに応えることは困難です。
食事、排泄、入浴といった目に見える形での介護とは違って、
認知症の方の漠然とした不安に対するケアは、「尊厳」にかかわることだからです。
グループホームは、病院や学校、会社のように、はっきりとした目的を持って人が集まる場所ではありません。
「生活」そのものが目的と言えるような場所です。
その暮らしの場所で、「好きなように歩く自由がない」と感じる方がいる。
スタッフはやさいしけれど、私たちを何もできない人のように扱っているではないか?と感じる方がいる。
何をどうしたらいいか、だれも教えてくれない。
そういった心の詰まりが、先ほどのような入居者様の言葉になって出てくるのだと思うのです。
認知症の方とのコミュニケーション・マニュアルをなぞるだけではなく、
入居者様と私たちが、人と人として信頼関係を築くこと。
それがいちばん難しいのですが、入居者様が明日に希望を持てるようなケアができるよう、
私たちスタッフは頑張っていきたいと思います。
介護支援専門員 片岡 博幸